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コンサート アーカイブ

2007年01月26日

東フィル定期演奏会:トゥランガリーラ交響曲

1/23、サントリーホールで行われた東フィルの定期演奏会に行ってきた。曲目はメシアンのトゥランガリーラ交響曲、指揮はチョン・ミュンフン、ピアノは横山幸雄、オンド・マルトノは原田節という、少なくともソリストレベルでは期待するなという方がおかしい素晴らしいメンツ。欲を言えばそりゃPfはアムランとかティボーデとかウゴルスキとかベロフがいいとか言えないでもないけれど、チョン・ミュンフンとバスティーユ管の名録音を知る人間にとっては、あるいは原田節がソリストを務めるシャイーとコンセルトヘボウ盤を知っていれば、この組み合わせは垂涎の的であろうと思う。

但しこの曲は長い。CDで聴いても1時間以上かかる代物だし、演奏会ではこれだけで90分は優にかかる。しかもメシアン独特の非逆行リズムが頻出するやら調性がヘンテコだったりするので、弾く側としては決して楽勝ではない。だからこそ生で聴いていい演奏会だとそれだけでシヤワセになれる官能大曲である。

で、23日の演奏会では、横山幸雄と原田節の名演が光った。メシアンのピアノ曲は超難曲で知られるものが多いが、とりあえずミスタッチらしいミスタッチはなく、第5・終楽章ではバリバリと弾いていていい感じだったように思う。原田節のオンド・マルトノも非常に手慣れた演奏で、特に第6楽章の「愛の眠りの園」ではウットリ感のある法悦溢れる音色をPfのコトドリの歌声と奏でていて美しいことこの上なかった。

ただ、問題はオケである。後半の楽章では弦の体力不足が露骨に目立ち、第8楽章以降のアンサンブルのガタガタさ具合はこれが果たしてプロの演奏なのかと疑うような崩壊寸前の危機も何カ所かあった。パーカス群もウッドブロックの奏者が何回か落ちたりするなど、集中力の低下が傍目にもはっきり分かる状態だった。金管隊が盛り上げ楽章では結構奮闘していたので終楽章のフィナーレではソツなく、しかも徹底的に長い嬰ヘの和音が官能大暴走でなかなかよかったが、全体としてはまとまりというか色彩を欠いたちょっとだらしのない演奏だった。そんなこともあって演奏後のカーテンコールではチョン氏もオケのメンバーを呼び戻すなどせず、各奏者を一人ずつ立たせるなどのこともせず、割とあっさりと終演でしたよ。確かにトゥランガリーラはプロオケでも手こずる超難曲というのは私でも知っているしスコア見たら卒倒しそうになるくらい複雑な曲だけど、そもそも東フィルだってプロなのだし、定期演奏会の割には決して安いチケットではなかっただけに、ちょっとガッカリ。

翌日のタケミツメモリアルホールでの演奏会はさすがに反省したのか、好意的な反応が多いようだ。会社から近いしサントリーホールでの演奏会だからという理由でこっちを選んだのはうまくなかったのだろうか。

ちなみに帰りにはロビーで売ってた原田節のアルバム『The garnet garden』を購入。前から探していたものだけに落手できて何より。

2007年01月29日

太田真紀 無伴奏ソロ・リサイタル『声』

先週の金曜日は、トーキョーワンダーサイト本郷にて催された太田真紀さんのソロ・リサイタルを聴きに行ってきた。会社から歩いていける距離というアクセスの良さもさることながら、ここは過去のイベントを見ても左大臣が大好きそうな現代美術や音楽のイベントを数多くやっていたわけで、こりゃ行かずにおれるかいなヒャッホウ! というわけでいろいろ調べてみたところ、ベリオとノーノの曲目を含む上記のリサイタルがあったわけです。曲目としては
・ベリオ:セクエンツァIII (女声のための)
・ヘスポス:ナイ
・河村真衣:結願(委嘱初演)
・ノーノ:照らし出された工場(光る工場)La Fabrica Illuminata
でした。ハンス=ヨアヒム・ヘスポスは名前しか知らず、曲を聴くこと自体初めてでしたよ。

リサイタルが催されていた場所は非常に狭く、せいぜいが30人くらいしか入れない(現代音楽のワークショップはこういうのが実に多い)ところでしたが、白石美雪氏や笠羽映子氏らしき現代音楽フリークにはおなじみの面々もポツポツと見えてミーハー心をかき立てられたり。まあ、次の時間帯のコンサートでカスティリオーニやケージの演奏があったというのもあるんでしょうが。

で、演奏の出来は素晴らしいといっても良かったんではないでしょうか。「セクエンツァ」は声量というか場所の残響がやや弱いため、特殊唱法が多発する箇所では表現が今ひとつ空回りするような残念なところも少しありましたが、概ね充実した内容だったと思います。
ヘスポスの曲は文字通りの初めてだったので、「こういう曲を書くんだねえ」以上の感想をもてなかったのは私の知識不足ゆえに他ならないのですが、まあ叫んだりわめいたり超絶的な表現が楽しい曲でした。で、最後に「無い」でガチョン。

「結願」はタイトル通り歌い手があちこちを移動しつつお経風の歌を歌うもの。お経と聞けば多くの人は多分某涅槃交響曲を思い出すだろうけれども、私もその例に漏れずカンパノロジーな世界に意識が飛びかけたり(笑)。

そして目玉はやはりラストのノーノの曲だろう。この曲は昼も夜もフル稼働のピカピカ工場の非人間的な状況をライブ・エレクトロニクスでもって強烈に批判した曲だが、26日の演奏ではライブ・エレクトロニクスを担当した有馬純寿氏の用意した素材が、ミラノ電子音楽スタジオでリマスタリングされた高品位の音源であったこともあり、もうグチャグチャドカーンバリバリバリバリドシーンウギャーな4chの音楽を堪能できた。ノーノのテープ音楽はマルチチャンネルなのでSACDの音源が全然ない(『力と光の波のように』のケーゲル盤は疑似3chであることに加えCCCDハイブリッドなのでクズ)現状を考えると、生で聞くしかないという状況なので、もう左大臣は大満足でした。太田氏の強烈な歌唱もこの曲でこそ活きるという感じであり、耳に乱暴な音の羅列の割には歌心がしっかり残るノーノの魅力を伝えていたと思う。

何せしかもこの晩の演奏会はチケット代がたったの1000円! 某のだめ演奏会なんぞに大枚はたくなら、絶対こっちを聴きに行った方がいいです。

折り込みチラシには「ハノン」の全曲演奏会という爆笑系のお知らせが入っていたり。大昔、オケの連中と「パールマンが弾いたセヴシック教本の録音とかあったらいいのにねー」と馬鹿な話をしたことがありましたが、いやはや、実際にやってしまう連中がいるとは。これも時間があったら行きたいですなあ。

そんなこんなでアフターリサイタルは大酒をかっくらってしまったのですが、翌日はしっかり「海の航跡」を鑑賞いたしましたのです。

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