古本屋で見つけたエルヴェ・ギベールの『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』を読了。
早い話がエイズにかかって死を意識して生きる著者の八つ当たり日記である。当時はまだ噂のレベルでしかなかったフーコーの死因がエイズであったことや、イザベル・アジャーニがいかにろくでなしであったか、等が情け容赦なく赤裸々に綴られている。
通り一遍の倫理感なら、こうした本を出すことに対しては反発もあるとは思う。このような著者側からの暴露は一種の欠席裁判に他ならないからだ。晒し者にされた人たちにとっては堪ったものではないだろう。だが、不治の病を、しかも(当時は少なくとも)極めて社会的偏見の強い病気を宣告され、死の恐怖と社会の理不尽さに震えながら生きていた著者の内面の絶望は想像するに余りある。そして後半に至るに従って明らかに平衡を失っていく彼の文体の崩壊は、彼自身の自殺を強く示唆する展開とも相俟って非常に苦しい。
苦しみ、悲しんでいるときに限って、人間というものは案外余所余所しく冷淡なものだ。他人は所詮他人なのだし、その事実はギベールだって私より数段よく分かっていたはずだ。だが、それ故にこそ、のギベールの孤独が胸に迫るのは私だけではないと思いたい。