先週の金曜日は、トーキョーワンダーサイト本郷にて催された太田真紀さんのソロ・リサイタルを聴きに行ってきた。会社から歩いていける距離というアクセスの良さもさることながら、ここは過去のイベントを見ても左大臣が大好きそうな現代美術や音楽のイベントを数多くやっていたわけで、こりゃ行かずにおれるかいなヒャッホウ! というわけでいろいろ調べてみたところ、ベリオとノーノの曲目を含む上記のリサイタルがあったわけです。曲目としては
・ベリオ:セクエンツァIII (女声のための)
・ヘスポス:ナイ
・河村真衣:結願(委嘱初演)
・ノーノ:照らし出された工場(光る工場)La Fabrica Illuminata
でした。ハンス=ヨアヒム・ヘスポスは名前しか知らず、曲を聴くこと自体初めてでしたよ。
リサイタルが催されていた場所は非常に狭く、せいぜいが30人くらいしか入れない(現代音楽のワークショップはこういうのが実に多い)ところでしたが、白石美雪氏や笠羽映子氏らしき現代音楽フリークにはおなじみの面々もポツポツと見えてミーハー心をかき立てられたり。まあ、次の時間帯のコンサートでカスティリオーニやケージの演奏があったというのもあるんでしょうが。
で、演奏の出来は素晴らしいといっても良かったんではないでしょうか。「セクエンツァ」は声量というか場所の残響がやや弱いため、特殊唱法が多発する箇所では表現が今ひとつ空回りするような残念なところも少しありましたが、概ね充実した内容だったと思います。
ヘスポスの曲は文字通りの初めてだったので、「こういう曲を書くんだねえ」以上の感想をもてなかったのは私の知識不足ゆえに他ならないのですが、まあ叫んだりわめいたり超絶的な表現が楽しい曲でした。で、最後に「無い」でガチョン。
「結願」はタイトル通り歌い手があちこちを移動しつつお経風の歌を歌うもの。お経と聞けば多くの人は多分某涅槃交響曲を思い出すだろうけれども、私もその例に漏れずカンパノロジーな世界に意識が飛びかけたり(笑)。
そして目玉はやはりラストのノーノの曲だろう。この曲は昼も夜もフル稼働のピカピカ工場の非人間的な状況をライブ・エレクトロニクスでもって強烈に批判した曲だが、26日の演奏ではライブ・エレクトロニクスを担当した有馬純寿氏の用意した素材が、ミラノ電子音楽スタジオでリマスタリングされた高品位の音源であったこともあり、もうグチャグチャドカーンバリバリバリバリドシーンウギャーな4chの音楽を堪能できた。ノーノのテープ音楽はマルチチャンネルなのでSACDの音源が全然ない(『力と光の波のように』のケーゲル盤は疑似3chであることに加えCCCDハイブリッドなのでクズ)現状を考えると、生で聞くしかないという状況なので、もう左大臣は大満足でした。太田氏の強烈な歌唱もこの曲でこそ活きるという感じであり、耳に乱暴な音の羅列の割には歌心がしっかり残るノーノの魅力を伝えていたと思う。
何せしかもこの晩の演奏会はチケット代がたったの1000円! 某のだめ演奏会なんぞに大枚はたくなら、絶対こっちを聴きに行った方がいいです。
折り込みチラシには「ハノン」の全曲演奏会という爆笑系のお知らせが入っていたり。大昔、オケの連中と「パールマンが弾いたセヴシック教本の録音とかあったらいいのにねー」と馬鹿な話をしたことがありましたが、いやはや、実際にやってしまう連中がいるとは。これも時間があったら行きたいですなあ。
そんなこんなでアフターリサイタルは大酒をかっくらってしまったのですが、翌日はしっかり「海の航跡」を鑑賞いたしましたのです。