2010年チュニジア・フランス旅行記(8)



12/24(金)
写真を何枚か撮ってみたが、真っ暗。バルブ撮影に切り替えて60秒露光してみたら、ブレがひどくてほとんど使い物にならず。ううむ、リモートレリーズ欲しい。ニコンのデジタル一眼レフ用オプションは高いので、例えば色々設定が訊く最上位モデルのMC-36は定価1万7850円もする(http://www.nikon-image.com/products/accessory/camera/slr/remote_code/ , Amazonなら約1万3000円)ので、今回の旅行では予算不足もあって断念したのだが、買っときゃよかったかな……

#リモートレリーズの下位モデルにはMC-30というのもあるのだが、ディレイ撮影機能が付いていないので自分撮りには不向き。まあ、ディレイ撮影は既に所有しているルミコンML-3と組み合わせて使えばいいという話もあるのだが……

さて、カメラで写真を撮るのは防砂梱包も含めてかなりの気合いが必要なのでマニア以外にはどうでもいい話として、砂漠ツアーに行くなら懐中電灯は必須である。真夜中に用を足しに行く際にも必要だし、その他何かと便利である。ちなみに私はMAGLightの小型のやつを持って行ったが、大変重宝した。


そのような話は一旦措くとして、夜半に何度か余りの寒さで目が覚めた。月明かりに妨げられているものの、星を数多く見ることができる。「降ってくるほどの」という形容はしがたいが、しばらく眺めていると目が慣れてきていくつかの星座をしっかりと見つけることができる。
だがもしかすると、星を見つけた、見つけないという話は余り本質的ではないのかもしれない。恐らくここで感得できるかもしれないことの一つというのは、人工的な装置が限りなく少ないこのような場所で、人工的なものに囲繞された私たちの生活世界の外部に、実は果てしなく豊穣かつ厳粛な無限が広がっているのだ、ということではないだろうか。

無論私が体験しているこのツアーは極めて擬似的な、ある種の「ごっこ」でしかない。だが、想像するにその外延には、かくの如き外部と日常的に接する営みが存在している、或いは存在していたのだ。
それは当然の如く人間の生命を極めてあっさりと打ち倒してしまうくらいに圧倒的かつ恐怖に満ちたものでもある。人間の生命というのはそれほどまでに弱く、脆い。だがそれ故にこそ私はそこに生きる人間の強さに思いを馳せずにはいられないし、同時に矮小なこの生活世界の彼岸の存在を星の彼方に眺める。
だからこそ、夜空は綺麗なのだ。

  
6時頃目が覚める。そりゃ10時半頃に寝たんだから当たり前だ。正直ものすごく寒い。そのうちラクダ引きのオヤジさんもモソモソと起きだしてきて、また薪を探しに出かける。比較的大きな枯れ木を拾ってきて、火を付ける。ああ、暖かい。
  
そうこうしているうちに日が昇り、徐々に気温が上がってくると同時に、風が吹き始める。空気の対流が起きているのだ。

ここでは朝食一つとっても支度に大変に時間がかかる。小生が日本にいるときは朝食などミュースリに牛乳をかけてあとは適当に果物を食って終わりなので15分もかからないが、ここでは火を起こす作業から始めるので、まずは湯を沸かすだけで30分くらいかかるのだ。

写真を撮り損ねたが、朝食はベルベルパン。パン生地を練ったものを焚き火のあとの砂地に埋め、再度その上で焚き火を行うことで加熱し、パンに仕上げるもの。勿論焚き火の熱はお湯を沸かすのに使うので効率的。

チーズやらオリーブオイルやらジャムやら、おやじさんが勧めるものを片っ端から全部塗って頬張りつつ、おやじさんとまた話す。
「今度来るときはクサール・ギレンまでのツアーなんかがお勧めだ」
「何日かかるよ?」
「5日間だ」さすがに真冬だと寒いんで勘弁してください……
「ラクダに乗ってくのか?」
「そうだ。一ヶ月のツアーもあるぞ」
いくら観光客向けにアレンジされているとはいえ、一ヶ月のツアーとなると途中に風呂もないわけで、相当にタフであることは想像に難くない。どんな人が参加するんだろうね……。1週間くらいなら何とかなるけど。

  
2時間ほどかけて食事を終え、片付ける。ラクダも戻ってきて、再度乗る。

ラクダに乗って揺られていると身体の筋肉が徐々にほぐれてくる。そのお陰か、昨晩の寒さで縮こまって寝ていたため体中の筋肉が固くなっていて痛い。苦しそうな表情をしていたのか、おやじさんは頻りに「大丈夫か?」と訊いてくる。大丈夫だ、問題ない。


10時少し前、4WD運転手A氏との合流場所に到着する。GPSで緯度経度を確認したところ出発点と微妙に違うので、一応確認したところOKとのこと。
この合流場所には他のラクダ引きのおやじさん達も来ており、彼らは1時間程度のラクダエクスカーションで観光客達を案内したあとだったらしい。

おやじさんにチップを渡す。10ディナールほどだが、子供に何か買ってやってくれといったら、喜んでいた。

10時頃A氏到着。まずはドゥーズの博物館を見物し、それからトズールへの帰途につくという。なお、A氏の昨晩の宿はさすがにドゥーズでは確保できず、ドゥーズから40キロほど離れた町で見つけることができたという。トズールに戻るのに比べれば簡単だが、それでも往復80キロは楽ではない。

     
  
ドゥーズの町に戻り、オアシス博物館を見学する。非常に簡素な作りの資料館みたいなものだが、アマージーグ人の婚礼衣装とか、部族ごとの織物の模様の違い、あとは砂漠に自生する植物の説明などがあり、わかりやすい。A氏のツテで学芸員に色々と説明してもらった(当然チップあり)のだが、大した金額ではないのでこういうところでは素直に学芸員に説明をお願いした方がWin-Winでいいと思う。
外ではリビアから来たベドウィン達がパレードの準備をしていた。また、テントの中では恐らく同じ部族の人々がジャンベのような打楽器を中心に音楽を演奏していた。しかしチュニジアもリビアも2ヶ月後には今のようになってるとは誰も思ってなかったろうな……
     
A氏とは今日別れる予定なのだが、彼はトズールで私を降ろしたあと、6時間ほどかけてチュニスに戻らなければならない。ひたすら高速道路を飛ばすだけだし、客がいないのでそれは気楽なドライブになるだろうと思うが、疲れないわけがない。

A氏はまたも途中で蜜柑を調達してくれる。曰く「トズールで食え」とのことだ。

道中、メールでのやりとりが可能ならやろうぜということになり、私のプライベート名刺を渡す。たいそうジャパネスクなデザインにしてあるせいか、大いに喜ばれる。ちなみにストックはまだ沢山あるので、欲しい人は私とリアルでオフ会しましょう。ただ残念なことに、彼からのメールはまだ来ない。このような情勢なので仕方ないとは思うが、写真の整理が終わったら彼が写っているものをプリントして、旅行代理店気付で送ろうかと思う。パパが働いているところの写真は子供も喜ぶだろう。

写真からも分かるように、今回アレンジを依頼したのはバトゥータ・ボヤージュという会社(http://www.batouta-tunisia.com/japan/?id_article=21)。日本人感覚からするとちょっと対応がのんびりした点なしとはしないが、トータルでは非常にいいサービスを提供してくれたと思う。10日で15万かかったけどね(勿論複数人で旅行すれば単独旅行サーチャージもかからないのでもっと安い)。

トズールが近づいてきて、A氏が今回の旅程について色々語る。短い期間だったが、馬鹿話ができたお陰でこちらも楽だったこと。今度来るときは沿岸部なども巡る旅がお勧めであること、そしてできればハネムーンで来い、ということ。相手紹介しろや!

昼過ぎ、トズールに到着。3日分+αのチップを渡し、別れを告げる。短い間だったとは言え、旅の道連れがいなくなるのはそれなりに寂しいものだ。

ホテルの部屋に戻り荷を解き、風呂を浴びる。髪を洗っても洗っても砂が陸続と流れ出てきて、バスタブの底に貯まる。たった一晩でこれかよ……。勿論ジャケット類もバルコニーでガンガン叩くとどんどん砂が出てくる。カメラやビデオカメラはブロワーで砂を落としたが、それでもグリップの一部には砂が今でも残っている。

ラクダ引きのおやじさんからもらったベルベルパンをかじって昼のひとときを過ごす。疲れていたのか、うとうとしてしまい、気がつくと夕方だった。さすがに小腹が空いたので先日タダでピザをくれた店のおやじさんからベルベルピザを買い、A氏のお勧め通りナツメヤシ(Deglet Nour種)の実の詰め合わせを買う。1キロで1つ4ディナール。国内で売られているジーバーガー社のものが200gで600円くらいすることを考えると破格の値段である。会社に土産で持ってったらデーツを知らない連中は気味悪がっていたようだが、個人的にはチャツネーにもできるし、お勧めのお土産です。

  
さて、この日はクリスマスディナーということでホテルで強制夕食。しかし客が減ったためただの晩ご飯になってしまったのはご愛敬だが、せっかくということでチュニジアのワインとしてはよく知られている部類に入るMagonを頼む。だけどこのホテルのレストラン、キャンセル客が沢山でたせいかガラガラだ……

  
完全な人余り状態のため、私一人に2〜3人の給仕がつくというなんだこのリッチメン状態という有様で食事を取る。ただし夕食はいわゆるビュッフェ形式のためもあり、余りおいしいとはいいがたい、つかマズい。Magonも最初のうちはスペインワインに似た味わいで酸味と甘みがうまくブレンドされていておいしいのだが、だんだん開いてきて渋みが増してくるとただの安い酒という馬脚を現し始める。んー、ボディ感がしっかりしているものを求めるならMagon Majusのほうがいいかも。

そんなこともあり早々に退散し、ホテル内のバーでチュニジア謹製のビールCeltiaをいただく。かなり軽い味わいのビールだが、グビグビ飲むにはこの程度でいいのかもしれない。一応日本でも1本400円くらいでたまに売られているが、そこまで出して飲むほどのものではない。やはりチュニジアはイスラム圏の国であり、酒なんか飲んだところであんまりいいことはないのだ。イチジクの蒸留酒のブハはおいしいけど。

翌々日はもうこの国を離れるということもあり、鞄の荷造りをしつつ、12時頃に就寝。




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